2024年11月、南会津の豊かな自然の中で、「杉林、食べる」というユニークなツアーを開催。 このツアーでは、私たちが普段「建材の木」としてしか意識していない杉の、新たな魅力を発見し、実際に「食べる」ことで体感するというもの。森と食のつながりを深く学ぶ一日になりました。
ツアーのはじまり
この日はあいにくの雨模様。しっとりと濡れた空気の中、土の匂いと触れ合いながら、雨粒が葉を讃えて静かに響いていました。
ツアー前の歓談タイム。温かいお茶を飲みながら、スタートの時間を待ちます。

杉林を歩く、杉を知る

散策の前には熊除けの花火を打ち上げ。大きな音が静かな森に響き渡り、これから始まる特別な体験への期待が高まります。

南会津の杉林へ。 杉の木に囲まれた静かな森の中で、参加者たちは「森の案内人」よっちゃんとともに、散策をしながら、杉の役割や生態について学びました。 杉の葉を手に取って揉んでみると、ほんのりと柑橘系のような爽やかな香りが漂います。
また、南会津ではかつて杉が生活のあらゆる場面で活用されてきたこと、そして現在は森林の手入れが慎重になっている課題もあることを知り、「杉を食べる」ことが森の未来にもつながるという視点を得ることができました。

森を未来へつなぐ、植樹体験
森の再生につながるクロモジの植樹体験。正しくな管理がされていない杉林では、光が見えず、他の植物が育ちにくく、結果クロモジも育つことが出来ません。私達は森を手入れし、そこに新たなクロモジの苗を植えることで、未来の森を育てる活動をしており、ツアーの参加者の皆さんにも植樹をお手伝いして頂いています。

手で植える苗はまだ小さく、頼りなげに見えますが、立派なこの森の一部。また誰かが育ったクロモジに触れ香りを感じる日が来るかもしれません。 土に手を入れながら、「食べること」と「森を守ること」がつながっていることを実感する時間になりました。

私たちの手で、杉を採集する
次に、実際に食事で使う杉を採集するための作業へ。参加者自身が杉の伐倒を行い、倒した木から枝葉を取ったり、木の幹をナタで割ったりと、森の恵みを直接手に取って作業に取り組みました。


普段はスーパーで簡単に手に入る食材も、こうして自分たちの手で「採る」ことで、その価値やありがたみをより実感できます。 特に、杉の幹を割ると中から現れる年輪の模様や、伐った瞬間に広がる芳醇な香りは、五感を通して杉の生命力を感じる特別な体験となりました。


杉を味わう、輪島シェフの特別な食体験
特別に森で採集した杉を使った料理を考えてくれたのは、神奈川県川崎「輪じま」の輪島シェフ。南会津の杉をテーマに、特別な食体験を提供していただきました。

この日のメニューには、杉の香りを移した「杉ご飯」など、杉の香りや風味を大切に置いた料理が並びました。香りが立ちのぼり、体がじんわり温まる味わい。


「杉を食べるなんて想像もしていなかったけど、とても美味しくてびっくりした」「料理すると杉の香りが優しくなって、心落ち着く感じがする」といった声が聞こえてきました。

おしながき


スギの枝葉から抽出したフレーバーウォーターに二種の柑橘を添えた瑞々しいふたつの香り水。食前酒のかわりに。

杉林の光と影を楽しむ摺流し。蕪を火入れしたあとに摺り潰し、出汁で伸ばして摺流しにしました。

しっとりと降る雨が杉の枝葉を洗い、長年積もった落ち葉を潤す——そんな情景をイメージした和え物。

山と海の繋がりを表現した、鮪節と杉の幹を挽いた温かみのあるお椀。

この地に降注ぐ雨水の行先である日本海・新潟で獲れた鮮魚を杉で活かしたお造り。

森の手入れの意義を表現した焼物。脂の少ない鹿肉の赤身を丁寧に火入れし、ローストに仕上げました。

杉香る炊きたての白米。白米を土鍋で炊く際に、杉の木も一緒に入れることで、白米に杉の香りを移しました。

杉林の余韻を感じるあんみつ。冷たい寒天と黒豆を炊いて作った餡子に、煮詰めた杉の樹液をお好みで。

お食事後の歓談
お食事の後はスタッフも交えての歓談タイム。今日の感想や、どうしてツアーに参加したのかなど、お話に花が咲きました。

ツアーを終えて
「杉林、食べる」は、杉の新たな可能性を発見する貴重な機会となりました。 私たちの日常的に目にする杉の木が、ただの建材ではなく、香りや味わいを持つ植物であること。 そして、森を守るために「杉を食べる」という視点が注目されること。
南会津の森には、まだまだ知られていない魅力がたくさんあります。これからも、ちょっとユニークな体験、自然との新しい関わり方を提案していきたいと思います。

